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■ストーリータイトル■
彼女の光



■ストーリー概要■

友人の見舞いで訪れた病院、僕はそこの中庭で小さなナイフを拾う。
そのナイフを通じて、僕は彼女達姉妹と知り合う。
物静かで他人との関わり合いを極度に避ける妹、晶。対照的に明るく豪快で男性的な姉、彗。
知り合って早々、僕は彗から晶の友達になるように頼まれる。
彗の雰囲気に押されながら、僕は二つ返事で承知し、晶と友達になると約束をする。
離れた地に住む上、口下手な晶と僕を繋ぐのはメールのみ。
そのメールを通じて、僕は晶が人を避けるようになった理由や、彼女達姉妹のことを知って行くことになる。
僕は、約束したように晶と友達になることは出来るのだろうか……。



■プロローグ■

友達の見舞いに訪れた病院の中庭。
僕はそこで、一人絵を描く少女に目を奪われた。何で目を奪われたかよく分らない。
ただ、理由を挙げるとすれば、少女がどこか寂しそうだったからだと思う。
友達の見舞いを済ませ、中庭を見ると、少女の姿は既に無く、僕は少しがっかりしながら、少女が何の絵を描いていたのか知りたくなった。
中庭に出て、少女が座っていた場所へ歩いて行くと、少女のいた場所に小振りの折りたたみナイフが落ちていることに僕は気が付いた。
拾い上げ、柄の部分を見ると《A.Kannabi》と持主のものであろう名前が彫り込まれていた。
他に何か持主の手掛かりはないかと、ナイフを開いてみると、赤や緑の粉がぱらぱらと落ちた。
その粉を見て、この場所にいた少女が色鉛筆のような物で絵を描いていたのを思い出した。
放置しておくか、預けるか迷った挙句、僕はナイフを受付へと預けることに決め、ナイフをポケットに入れて受付へと向う。

受付に着き、看護師さんに声をかけようとした瞬間、僕と受付の間にスーツ姿の女性が割り込み口を開いた。
「小さな折りたたみナイフなんだけど、届いてない?」
看護師さんと話しをしている女性の横。そこには、中庭で絵を描いていた少女が立っていた。
少女の顔は、どこか不安げで、話しをしている女性も何か焦っているように見えた。
「まいったな、晶。お前、中庭の他にドコ寄った?」
「え、ええと……。売店で消しゴム買って、その後……」
女性が少女を晶と呼んだことで、僕は今ポケットの中に入っているナイフが少女の物であることを確信した。
「仕方無い。もう一度、お前が行った場所を片っ端から探そう」
「うん、ごめんね」
受付に預けても良かったけれど、早く見つかった方が良いと思い、早足で受付から去ろうとする二人に声をかけた。
突然知らない人間から声を掛けられた二人の態度は対照的で、少女は警戒しているかのように怯えた目で僕を見る。
もう一人は「今忙しいから、後にしてくれ」と、軽く威嚇するように言い放ち、歩きだしてしまった。
それを呼び止め、ポケットからナイフを出し、中庭で拾ったことを告げると二人は顔を見合せて、深く息を吐いた。
「あぁ、そうだったのか……。焦ってたんだ、すまない。ほら、晶」
女性からそう言われ、少女は小さな声で「ありがとうございます」と言うと、ぎこちない動きで僕の手からナイフを受け取った。
「よし、礼を兼ねてコーヒーでも奢ろう。ついてきなよ」
ナイスアイディアとばかりに何度か頷くと、スーツの女性は僕の返事を聞かずに先に歩いて行ってしまった。
展開の速さに、頭の上にハテナマークを僕が浮かべていると、「もし、時間があったら……。あの、お礼ですから」と少女は言うと、先を行く女性を追いかけて行ってしまった。
一人残された僕は少し迷った挙句、せっかくの誘いを断るのも悪いと思い、僕は二人の後を追った。

二人の後を追うと、そこは喫茶スペースになっていた。遅れて入った僕に女性は「ほれ」と缶コーヒーを放り投げ、自分の手にあるコーヒーを開け飲み始めた。
横の少女もそれに続くようにジュースを飲み始めたので、僕も缶を開ける。
「私は甘南備 彗(かんなび けい)って言うんだ。この子は妹の晶」
晶と呼ばれた少女は、「晶です」と小さく頭を下げた。
その少女の態度に彗は困ったように苦笑しながら、頭をかいた。
「あー、この子ちょいと人見知りが激しくてな。まぁ、悪く思わないでくれると助かる。で、あんたの名前は?」
催促され僕が名前を名乗ると、彗は何度か頷き「良い名前じゃんか」と笑顔で言い、美味しそうにコーヒーを啜った。
「なぁ、こうして知り合ったのも何かの縁だ。あんた、この子と友達になってくれないか? この子、誰にでもこんな感じでな。姉の私が言うのも何だけど良い子なんだけど」
そう言われ晶を見ると、彼女は彗にちょっと不服そうな表情を向け、そして不安そうな視線を僕に向けた。
別に断る理由も無い。
そう思った僕は二つ返事で了承すると、晶はぎこちない笑顔を僕に向けた。
僕の返事に満足したのか、彗は嬉しそうに笑った。
が、笑ったと同時に、何かを見つけたように宙を見て固まった。
その目線の先には、壁に掛けられた時計。
「あー、仲良くなろうって時に悪いんだが、時間だ」
時計を見ながら彗さんがバツが悪そうにそう言った。僕が何のことか分からないと言いたげな顔をしているように見えたのか「言ってなかったけど、私らここら辺の人間じゃないんだ」と付け加えて、缶をゴミ箱へと投げ入れた。
「晶、飛行機に乗り遅れたら困るから行こうか」
「うん、それじゃあ……」
彗の言葉に素直に晶は頷いて、僕に「さよなら」と言って会釈すると喫茶スペースを出て行った。
一人で歩いて行く晶の背中をぼんやりと眺めていると、彗がメモ用紙を僕に渡してきた。
「なんつーか、こっちが友達になってくれって頼んだのに、遠く離れた所に住んでるって言わなくて済まなかったな」
僕が「いえ……」と首を横に振ると、彗は苦笑した。
「これ、晶のメールアドレスだ。良ければ、あんたのも教えてくれると嬉しい。ヘンな言い方だが、メールなら晶も普通に会話が出来るんだ。ただ、あの子は頻繁にパソコン使えるわけじゃないからメールって言うより文通に近いかもしれないけど」
僕が何も言わずにメールアドレスを教えると、彗は嬉しそうに「あんた、ホントに良いヤツだな」そう言って僕のアドレスと手帳にメモすると、晶の後を追って喫茶スペースを出て行った。

次の日、メールをチェックしていると未登録のアドレスからのメールが届いていた。
よく見るとそのアドレスは、彗が晶のものだと言って僕に渡したアドレスだった。
彗の望むように僕は晶と友達になれるのだろうか、そんなことを考えながら僕はメールを開く。