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■ストーリータイトル■
 碧星のキラル



■ストーリー概要■

 手の届く場所に無数の星を抱く平面惑星キラル。自然や古い建物と共存して発展してきた電脳世界。けれど、平面なその大地の果ては、常に自然崩落を起こし、せめぎ合う無重力空間へと霧散していた。
 人々は故郷を守るため、太古より周囲を飛ぶ小さな星と契約し、崩落阻止、大地創生を永続する。星を使う能力者を、世界は単純に『星使い』と呼んだ。

 星使いを養成する学園『ユラン』の生徒である主人公は、他学園の学生と能力開発目的の交流をする義務があった。指定された相手はクールな女学生、那久流(なくる)。必死に交流を持とうとするが、相手にされない。
 しかし、主人公が階級を超えた能力である遠隔能力を持つことを知り、彼女の態度は急変した。那久流との交流は、平和に生きてきた主人公の基本理念を大きく揺るがしていく。
 緑の大地。星の煌めき。最果ての運命は主人公の手に託された――。



■プロローグ■

 常に変革を求める世界キラル。
 碧い平面世界は、なだらかな平和が続いているように思え、その端から崩落していた。
 
 目覚めたばかりの耳に、大地が砕け落ちて行く轟音が届いた。那久流はベッドから身を起こした。
 ゆっくりと立ち上がり、自室の鏡に向かう。
 巨大な三面鏡の前に立ち、まっすぐに腰まで伸びた髪を二つに分けた。耳より高く固く結び、同じように唇を固く結んだ。鏡には色を無くした頬。漆黒の瞳に天井のライトが映り込んでいる。
 窓の外にそびえる槍塔の鐘が鳴った。開始を知らせる予鈴。
「誰も見ようとしないんだわ」
 音と共に那久流は眉をひそめる。自分に苛立っているのだろう。そこから顔を背けた。
 鏡を閉じ、那久流は踵を返した。石造りの机の上にある四角いスイッチを押す。と、青いパネルが空中に開いた。那久流は右端の点滅する封筒フォルダに触れた。
 無数に届く怪文書。次々と開いていく意味を成さない言葉の羅列に簡単に目を通し、那久流は深いため息をついた。一番最後に届いたメールを読み始める。

『 西都学園「ルルファ」三期生 ヤタの那久流 

   中央学園「ユラン」生徒との学園間交流を命ず。
   相手生徒の詳細は追って連絡する。
   
   交流結果は以下の項目を添え、提出を要す。
    ・紋章現象の発現率
    ・星融合率
    ・特殊値、もしくは特殊力発現の有無
   
   これは義務であり、権利であることを此処に記せり。
   
   
                   中央政府 星使部門 』

 浮かび上がった文字を一文字づつ指でなぞり、那久流は瞼を閉じた。眉間に苦悶の皺が刻まれて行く。
「こんなこと、してる場合じゃないのに……」
 感情を懸命に押し殺した声。指先は握り込まれ、両の拳が固い石の上で震えていた。
 明るい光が満ちているはずの室内は、青ざめた空気が充満しているようだった。。
 そんな悲壮感漂う那久流の背後から、前触れなく、小さな球形の発光体が飛び出した。くるくると彼女の周囲を回り始める。それは二つに増えた。一つは緑の光を発し、一つは金の輪を持っていた。彼女の耳や鼻先をくすぐるように浮遊し続けている。那久流はわずかに頬をゆるめ、瞼を開いた。
「大丈夫……、心配しないで」
 そっと右手を差し上げた。
 小さな球体――星は、嬉しさをなめらかな動きに表しながら、広げられた手の平で浮遊する。発光を止め、じっと那久流の言葉を待っているようだった。
「時間がおしい。けど、規則には従わなくてはね」
 答えるように、星は浅緑の光を点滅させた。
「わかってる。さ、窓を開けるわ」
 星が嬉しそうに飛び出して行く。
 やわらなか風が頬を撫でた。
 太陽の暖かさが、ようやく那久流に届いた。染み渡っていく熱を愛おしむかの如く、那久流は自らを腕に抱いた。

 眼下に、緑の原が風にそよぎ、立ち並んだ巨大な樹木に大きな黄色い実が熟れている。
 遠くで再び、大地の悲鳴と崩落の轟音が響いていた。

 しかし、那久流は願っていた。誰かに支えてもらいたいと。運命さえも変える出会いが与えられる日を。
 予感のようなものが心を揺らす。小さな胸にそっと隠して――。