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■ストーリータイトル■
ハコツル ~箱を開けて鶴~



■ストーリー概要■
竜宮城のドジな女官の手違いにより、玉手箱ではなく魔法の化粧箱を渡されてしまった浦島太郎。
凶悪な外見をしたウツボすらも美しい女性に変えてしまうと言うその化粧箱の効力はすさまじく
箱を開けて気づいてみれば、何故か鶴の翼を持つとびっきりの美少女になっていた!
これからどうしようと途方に暮れていると、通りかかった外道な陰陽師に拉致され……気づけば貴族の貢物に!
あれよあれよと、貴族の娘らしく振舞うことを要求されるものの、元が少年であった浦島はそれを拒否する。
が、しかし。周囲は何とか浦島を淑女にすべく奮戦し続け……今日も今日とて、平穏は訪れない。
この先どうなってしまうのか。そんな童話風味なTSストーリー。



■プロローグ■
昔々、ある浜辺に浦島太郎という、漁師見習いの少年が住んでいました。
彼はある日、浜辺で亀を助けたことにより、乙姫の住む竜宮城に招待されることになりました。
楽しい接待を受けた浦島でしたが、真面目な彼は『いつまでも遊んでいるわけにはいかない。帰らなければ』と考えます。
そんな浦島に、乙姫は手土産として玉手箱を用意しました。何しろ地上と海中では、時間の流れが違います。
そこで地上に戻った彼が、地上で流れた分の時間をすぐさま取り戻すための道具として、玉手箱は用意されたのです。

「少なくとも、地上に着くまでは開けてはなりません。
 たとえ地上に着いても、絶望しない限りは開けないでください。
 あるいは……絶望したのなら、開けることで救いを得られるかもしれません。
 こんなものが必要ないよう、いつまでもここにいてくださればいいのですが……」

意味深な乙姫の言葉に戸惑いつつも、浦島は玉手箱を受け取って、地上へと戻りました。
すると浦島が竜宮城に滞在しているうちに、地上では長い時間が流れ……両親も友人もすでに天寿を全うしたあとでした。
自身を知るものがいなくなった浦島は、絶望から玉手箱を開きます。すると、彼を不思議な煙が包み込んで……

「それでなんで、ボクが女の子になってるの!? しかも、背中には翼が生えてるし!?」

漁師を目指していた真面目な少年は、翼を持つ美少女になっていました。つい先ほどまで絶望していたはずの彼ですが、
今は飛び上がってオロオロしています。正直なところ、両親がいなくなったことより、その、何と言うか……太ももの
間にあったはずのものが無くなったことの方が驚きです。ビックリです。ガックリです。彼はかなり凹みました。

「普通、御伽噺的にはおじいさんになるか、鶴になるかでしょ? なんで鶴の羽を持つ女の子なの?」

いっぱいいっぱいなのか、かなりギリギリな発言をする浦島でした。

「ボクの……ボクの大切なモノが、なくなっちゃった」

浜辺でがっくりとうなだれる美少女。しかし台詞の真意はかなり微妙なものです。主に美少女的な意味で。
そうこうしていると、以前に浦島の助けた亀が浜辺へと姿を現しました。そして一言『うわぁ、遅かったか』と呟きました。

「えーっと、タイやヒラメの舞踊り。見ましたでしょ? アレの踊りが覚えられなくて、雑用に回された不器用な子がいるんです。
 その不器用というかドジな子が、貴方に渡す玉手箱の用意を間違えまして……いやぁ、あっはっは。大変ですね、ウラシマ殿」

竜宮城に就職しようとする魚の中には、ウツボのような恐持ての魚もいます。しかし、乙姫から渡される『身支度品の化粧箱』を
使用すれば、たちまち城の中を歩くにふさわしい美女になるそうです。浦島に渡された箱は、そんな『誰でも美しくなる化粧箱』で
あったそうです。

「まぁ、地上ではかなり時代も移り変わったようですし、女の子として第2の人生をお楽しみくださいませ。でわ~」

お気楽にそう言い放ち、亀は竜宮城へとそそくさと帰っていきました。早く帰らないと、時差が大変だからだそうです。

「うぅ……ドジっ子なんて、嫌いだよぅ……」

一人残された浦島は、涙をぽろぽろと零しました。しかしその台詞はちょっと微妙なものです。主に美少女的な意味で。

「むっ!? 何とも美しい天女が浜辺で遊んでいるではないか!」

そんな浦島太郎を、たまたま通りかかった男が見つけました。
彼はにっこりと笑うと、その懐から怪しげな呪符と縄を取り出しました。

「貴族に売れば、しばらくは酒に困るまい! はっはっは!」

外道術士でした。

…………その後。あっさりと捕獲された浦島は、貴族の屋敷へと連行され、さらには鶴乃と言う名前を与えられるのでした。

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理想的な花嫁として出荷されるために、今日も鶴乃は花嫁修業に励みます……というか、正しくは励まされます。
世話役兼教育係りの女官たちのやかましい注意に、鶴乃は落ち込まされてばかりの毎日です。
最近の口グセは『何でボクが……』になりつつある鶴乃だったりします。

「もう少し女性としての自覚を持ってください。今のままでは、誰のお嫁にもなれませんよ?」
「む、無茶言わないでよ。そもそもボクは、お嫁になんて行きたくないんだよ?」

しかし、現実として鶴乃は貴族への貢物として連行されてきたケモノっ娘。
いつかはより高位の貴族の屋敷へと嫁がされることが決まっているのです。
教育係りを兼ねる世話役の人々は、それはもう教育熱心です。メラメラ燃えています。
立派な女性に仕立て上げ、どうせなら側室や妾より正妻に! その方が教育した者としても、鼻が高々なのです。

「貴女と言う人は……お願いですから、男性に対してもっと興味を持ってください」
「絶対に嫌だよっ! ボクは女の子の方が好きなんだもん!」
「まったく、この無能変態はどうした教育したものでしょうか」
「……む、無能変態って……確かにボクは貴族的なことが何も出来ないけれど」

海に出ればボクだってそこそこ有能だよ! 漁師の息子だったんだし!
そうは思うものの、しかし言っても無駄そうなので耐える鶴乃でした。
実際、漁の上手さなど世話役にとっては限りなくどうでもいいことでした。

「慎みもなければ、教養もない。文字の読み書きも当然のように出来ないと来ています」
「だって、特に必要なかったし……」
「ふむ。文字をさっと仕込んだ後に、日記でも書かせてみるべきでしょうか?」
「日記って、何?」
「毎日の出来事を記していくことですよ、鶴乃様」
「ま、毎日? どうしてボクがそんな面倒そうなことをやらなきゃいけないの?」
「では毎日ではなくて、週に1度か2度くらいでも構いません」
「それでも面倒だよ。うぅ、文字を読むのですら大変なのに、自分で書くだなんて」
「しかし、それは出来なければならないことなのです。貴方は貴族の花嫁となるべき存在なのですから」
「だから! 嫌だよ、花嫁なんて!」

そう言い捨てて、鶴乃は小うるさい世話役の眼前から逃げ出します。
そして向かった先は、世話役の筆頭にして鶴乃と同年代の……つまりは可愛らしい少女$名のもと。

「ねぇねぇ、$名ちゃん。ボク、花嫁になんてなりたくないよ」

唇を尖らせて不満をあらわにそう言う鶴乃に、$名は苦笑しました。
年の頃はそう変わらないと言うのに、どこか手の掛かる妹のようにも思える鶴乃。花嫁修業が嫌だと、よく逃げ出す鶴乃。
そんな彼女に対し、$名はいつもちょっとした苦味を感じつつも、笑みを浮かべさせられてしまうのです。
本当に仕方のない娘ね、この子は。そんな風に内心で少しお姉さんぶってみたりもする$名でした。

しかし、今日は後に続いた鶴乃の言葉によって、$名はちょっと固まってしまうことになりました。

「ボク、どうせなら花嫁になるんじゃなくて、花嫁を貰いたいな。ね、$名ちゃん。ボクのお嫁さんになって?」
「………………はい?」

女の子同士なのに? え? ダメかって? ボクのことが嫌いかって? 
ううん、そんなことないけれど、でも、えっと……その……あの……本気?

満面の笑顔で抱きついてくる鶴乃に対し、$名はただただ固まります。

女の子経験値ゼロで花嫁修業を続ける鶴乃。
恋愛経験値ゼロで女の子から告白された$名。

二人の明日はどっちの方向?