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■ストーリータイトル■
初恋チェンジ



■ストーリー概要■

五月富士高校に通う須藤宏は、顔も性格もそう悪くないのに何故か恋人ができない男子高校生。
今回も渾身の告白を試みるが、またかのパターンであえなく撃沈してしまう。
意気消沈で教室に戻る宏。そこに親友の恋人である榊原梨奈がやって来て、振られ続けるあなたに朗報だと言って、宏と話をしたいという女の子のメールアドレスが書かれたメモを手渡す。
想像すらしていなかった展開に思わず驚きの声を上げる宏。
このチャンスを逃すわけにはいかない!
突然、転がり込んできた最高の幸運を活かすため、宏はためらうことなくその女の子とのメールのやりとりを決意する。
いったい、どんな子なんだろう……
見ず知らずの女の子のことを考えるうちに自然と期待が膨らんでいく。
果たして宏の悲願は叶うのか?



■プロローグ■

「ごめんなさい。私には他に好きなひとがいるんです」
 玉砕覚悟で臨んだ告白は、やっぱり玉砕という結果に終わった。
 一礼して立ち去る女生徒の背中を見送ったあと、俺はがっくりとうなだれた。
「また振られちまった……」
 お馴染みとなった言葉が自然とこぼれ落ちる。なんともいえないやるせなさだけが残った。
 じわじわと無念さが込み上げてくる。この前は極端に落ち込んだが、今回は悔しさのほうが先行していた。ある意味そっちのほうがいいと最近になって分かってきた気がする。悔しいという気持ちのほうが立ち直りやすいからだ。
 だが、やはり振られた事実は軽くない。だから、そうなってしまうたびについ考えてしまう。
 俺の何がいけないのか?
 俺に何が足りないのか?
 顔がイケてないせいか?
 腹が多少出てきているせいか?
 実は性格に問題があるかも?
 告白した場所が悪かったとか?
 いや、もしかして悪いのは、告白の言葉なのかもしれない。
 考えていくときりがない。結局、何が悪いのか分からないという結論に至った。これもいつものことだった。
 ひとり残された俺は、哀愁を背負いながら校舎内の中庭をあとにした。
 教室に戻って席に着くと、これまたいつものように奴がやって来た。まるでこのタイミングを計ったかのように。
 そいつの名は高坂直人。俺のクラスメイトにして悪友兼親友だ。
「よう、その調子だとまた記録を更新したみたいだな」
 直人は愉快そうに話しかけてきた。
「うるせえ、分かってて聞くな」
「いやあ、もしかしたらって可能性もあるだろ。だから、一応聞いてみた」
 悪びれた様子もなく漂々と受け答えする。
「ひとの不幸を面白がりやがって」
「じゃあ、慰めてやろうか?」
「断る。余計自分がみじめになる」
「だろ」
 直人は屈託なく笑った。
「しかし、なんでここまで振られるのか不思議だ。見た目はそう悪くないはずなんだけどなあ。まあ、イケメンには程遠いけどな」
「うるせえ。おまえだって、イケメンじゃないだろ」
「でも、俺にはちゃんと彼女がいるぞ」
 勝ち誇ったように言う直人。
「うぐぐ……」
 何も反論できなかった。それを言ってはおしまいだ。
「おーい」
「お、噂をすればなんとやらってやつだな」
 直人の視線の先にいたのは、隣のクラスにいる榊原梨奈だった。
「おまえたち、カップルで俺を笑いに来たのか」
 ついそんなことを言ってしまう。もちろん、偶然だというのは分かっているのだが、そう言わずにはいられなかった。
 改めて思う。直人は勝ち組、俺は負け組なのだと。だから、ひがむなというのが無理なはなしなのだ。
「あら、ずいぶんご機嫌ななめだね。何があったの?」
 梨奈が彼氏である直人に尋ねる。
「いつものあれだよ」
「ああ、また振られたんだ。これで30の大台突破になるかな」
「いくらなんでも、そこまで振られてはいないぞ」
 ふてくされながら言う。厳密にいえば、高校に入って11回、通算25回目だ。近いけど、まだそこまではいっていない。時間の問題という見方もできるが、俺は断じて認めない。
「ふーん、そうだったけ。でも、たぶん20回は超えているでしょ。そんな可哀想なあなたに朗報でーす。これを見て」
 と言って、彼女が渡したのは一枚のメモだった。
 俺は受け取ったメモを開いて中を見た。
「これはメールアドレス?」
「うん。しかも女の子のメルアドだよ。あなたとメール交換したいっていう女の子のね」
 梨奈がにっこりと笑う。
「なにいいい!」
「おいおい、マジかよ!」
 俺と直人は同時に驚きの声を上げた。
「で、その女の子は誰なんだ?どこのクラスだ?どんな感じの子だった?」
 思わず席を立って梨奈に詰め寄る。嬉しさのあまり本能で体が動いてしまった。
「ちょっと少し落ち着きなさいよ。実は私もどんな子なのかは分からないのよ」
「直接そのメモを渡した子と会っておいて、分からないってことはないだろ」
「これは私の知り合いの後輩経由でもらったから、メルアドを書いた女の子とは直接会っていないの。その後輩が言うには、極度のあがり症で、その後輩以外と直接話すのが苦手なんだって。それで私が急きょ恋のキューピットになったというわけ」
「そうなのか……」
 俺は顔を知らない少女に想いをはせた。雰囲気からして、奥ゆかしい女の子のように思えるのだが……
「で、どうする?って、聞くまでないかな」
「ああ、もちろんやるとも!こんな大チャンスをみすみす逃してたまるかっての」
 即答する。迷いは微塵もなかった。
「ついにおまえにも春が来たって感じだな。くれぐれも焦って相手の女の子に嫌われないようにしろよ」
「言われなくても分かってる。俺はこのチャンスを絶対に活かしてみせる!」
 親友のエールに俺は力強く答えた。
 初夏に訪れた初春の予感に俺は期待を大きく膨らませた。