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るつぼ提出一作目。不採用になったシナリオのメッセージ部分です。
ミステリー&現代怪奇風のストーリーを狙って、見事に撃沈しました。(一陽)
<一通目>
ああああ、$(ユーザー)!
こんな時に電源切ってるってどういうことですか!
電話が繋がらないんじゃ、相談とかできないじゃないですか!
僕が怖がりだってこと忘れてるんじゃないですよね!?
っていうか、出かける前にちゃんと確認取りましたよね?
「何かがあってもなくても電話をするから、絶対に出てくださいね」って!
大丈夫だって言うから平気な顔して出てこれたっていうのに、これじゃあ詐欺ですよ!
ああもう、とにかくですね。今メチャクチャ困った状況にいるので、このメールを受け取り次第連絡ください。仮にも師匠なんですから、弟子からのSOSを無視しないでくださいよ!
実は、たまきに連れられて商店街の端にある元古道具屋に来たんです。
$(ユーザー)も知ってますよね。例の蒸発事件があった店です。店主が急に消えたっていうんで、警察が店内を捜索してたことがあったでしょう? あの店です。
嫌な感じがしたんですけど、飼い主が中にいるかもしれないって言うもので、ちょちょいと鍵を開けて中に入ったんです。で、ですね。やっぱりなんか『いそう』なんです。そこらのザコじゃなくて、大物っぽい気配をビンビン感じるんです。
皮膚の表面がビリビリする感じです。本能が逃げ出せって訴えてきますし、だんだん体の芯が冷たくなってきました。$(ユーザー)と樹海でのサバイバル修行を敢行したときに感じたのと似ています。これって危険ですよね、ヤバイですよね?
たまきは奥を見て来たいって言うんですけど、止めたほうがいいですよね? $(ユーザー)が一緒の時に来たほうがいいで――って! わあ! たまき!
たまきが奥へ入っちゃいました! 捕まえてきます!
たまきを捕まえましたけど……もしかしたら、まずいかもしれないです。なんか、気配が動き始めました。
例の“ヤバイもの”です。今まで二階の端っこにいるような感じだったんですけど、だんだんこっちに近付いてくるような……。
逃げたほうがいいですよね! ああでも、勘違いなら動かない方がいいだろうし。様子を見たほうがいいでしょうか、って、たまきがまた! 追います!
たまきを確保。でも、ああ、近い。
飼い主かもしれないって言ってるんですが、こんなの絶対違いますよ。仮にそうだったとしても、こんな凶悪そうなの僕の手には負えません!
帰っていいですか? っていうか、逃げます! もう無理です! 限界です! $(ユーザー)、生きて戻れることを祈っててください!
<2通目>
では。$(ユーザー)に命じられたとおり、メールで報告をします。
一週間ぶりに来ましたが、この間と全く変わってませんね。気配の質も、なんとも言えない不快感も同じです。
悪化しているよりはマシですけど、僕の知らないところで$(ユーザー)が手を貸してくれていたらいいなーというささやかな願いが叶わなくて残念です。
わかってます。これは僕の試練なんですから、$(ユーザー)が手を出すことはできないっていうんでしょう? でも怖いものは怖いんです!
たまきと一緒に、できるだけ遠くから姿を確認してすぐに逃げますから。それ以上何かを期待しないでくださいね。
ところで、これってなんなんです? 出かけに$(ユーザー)が持たせてくれた荷物の中身ですよ。
軍手に折りたたみノコギリに医療用マスクに、鍵開けの道具? 『ザ・鍵師』なんて本まで入ってるんですけど……なにか良からぬ道へ導こうとしてませんよね?
確かに僕は手先が器用ですけど、犯罪に手は染めませんよ! この家のどこかに金庫があっても絶対に開けませんからね! ってたまき? わあ待って!
例の霊とご対面してしまいました。ああ、でも大丈夫です。
僕が$(ユーザー)の弟子だってわかったら、急に邪気が消えて普通の人間霊みたいになりました。
それと、やっぱりたまきの飼い主じゃなかったです。
この霊は五十代の男性ですね。輪郭がぼやけているので細部まで見えないんですが、もしかしたら……ああ、いいです。憶測で物を言っても仕方ないですもんね。
ここ三十分ほど、台所の床を切ってます。($(ユーザー)が持たせてくれたノコギリと軍手が役に立ちましたよ)
もちろん、僕の意思じゃないですよ? 帰ろうとしたら霊に捕まってしまって、頼みを聞いてくれと土下座されちゃったんです。
断ったら呪われそうだったんで了承したんですが、嫌な予感がします。僕、こういう勘って外したことないんですよね……。
床の下からドアが出てきました。頑丈そうな鍵つきですよ。
鍵開けの道具と『ザ・鍵師』の本が役に立ちそうですね。――ていうか、$(ユーザー)は何をどこまで知っているんですか。
この用意周到さは尋常じゃないですよ。未来予知の能力でも持ってるんですか?
鍵が開きました。
残る道具はマスクだけなんですが、ドアを開ける前につけたほうがいいんでしょうか。いいんでしょうねー。
あの。このメールを送ったあと、三十分以上音沙汰がなかったら迎えに来てもらえますか? 僕、たぶん気絶してると思うので。
千里さんにも連絡をお願いします。では。
<3通目>
あ、そうだ。行き先を言わずに出てきちゃいましたけど、今日は住宅街の方へ行って、たまきが住んでいた家とか飼い主のお墓を探してこようと思ってます。
なんか、飼い主を捜しているうちに、家の方角とか分からなくなっちゃったみたいなんですよ。なので、たまきと一緒に見慣れた景色がないか確かめながら適当に歩いてきますね。
今、公園の横を歩いているんですが、ものすごい邪気というかイヤ~な気配をビンビン感じます。
護身用の道具は持ってますが、たまきを抱えているから上手く立ち回れそうにないんですよね。あ!
ひい、囲まれました!
三体……いや四体かも。原形を失くした混じりモノです。複雑で強い悪意を向けてきてます。
$(ユーザー)、すみません。非常用の護符を使わせてもらいます。使わないと逃げられそうにないです!
僕だって使いたくはないですけど、命には代えられません!
さようなら、売値三万五千円! いざ!
え?
うあああ、三万五千円が!
嫌がらせですか! それとも僕の運が悪すぎるんですか!? 助けに入るなら、あと一秒早く動いてくれればよかったのに! 誰が弁償してくれるんだ、三万五千円ー!
す、すみません。なんとか落ち着きました。
意味不明なことを書き連ねてしまいましたが、つまりはこういう事です。
護符を使った瞬間、横から変な人が出てきて四体の霊を倒しちゃったんですよ。
同業者、ですよね。たぶん。
男女の二人組で、男性の方が二十代。女性の方が高校生くらいに見えます。
お礼を言わなきゃいけない立場なんですけど、三万五千円のダメージが予想以上でして。喉から言葉が出てきません。無理に口を開こうとすると、あと一秒早ければ……! とか言いそうです。実際に言ったら怒られそうなので、もうしばらく黙ってようかと思います。
……なんか、たまきのことで因縁をつけられてます。
髪の長い女の子の方が『そんなのを持っているから襲われるんだ!』ってしつこいです。でもここで『たまきは依頼人です』なんて言ってしまうと話がややこしくなるので、ガマンして貝になります。
もう一人の男の人も、僕をじーっと見ていて気味が悪いですね。
僕の存在は知られていないはずですから、顔を見ただけで$(ユーザー)の弟子だと気付かれることはないと思いますが……。あ。解放されました。やっと帰れます。
$(ユーザー)、プリンが好きですよね? 食べたいですよね?
すぐに帰ってすぐに作りますから、楽しみに待っててください。では!
<4通目>
あ、そうだ。今日もまた、たまきの家探しです。お墓が多い場所があるでしょう? あの辺りを見てこようと思ってます。
でもって、前回の失敗を教訓に装備を充実させました! 『とっておき』の札以外にも、逃走に役立つものをいくつか鞄に詰めてきましたよ。
一時的に動きを止める霊縛煙玉とか姿を見えなくさせるザ・保護ショック。対人間霊専用の読経鈴も持ってます。ちょっと鞄が重いですが、命には代えられませんからね。一応、$(ユーザー)にもらった十手も腰に下げてますけど、逃げるのを第一に考えてますから使わないと思います。まあ、脅しくらいには使えるかな? 墓場周辺だと浮遊霊が多そうですもんね。
ん? たまきが帰ろうって言い出しましたけど……。
うわー。これが理由か。
運悪く、例の二人組と遭遇しちゃいましたよ。しかも思いっきり不愉快そうな顔をしてます。
また、たまきのことを「こんなもの」呼ばわりする気でしょうか。
誰が何を持って歩こうと、あの人たちには関係ないと思うんですが……。
どうやら、狙いは僕のようです。
僕が八百坂万里の弟子だと知っていて、思いっきり馬鹿にしてきます。本当のことなら何を言ってもいいと思ってるんでしょうかね?
だいたい、$(ユーザー)が天才だからって弟子が優秀だとは限らないじゃないですか。こういう力は修行でどうにかなるものじゃないんですから、言いがかりを付けられても困りますよ。何が言いたいんでしょうね、この二人――って、は? お手並み拝見? て! うわわ、ウソっ!? 本気ですかこの人たち!
今の今まで、平凡とか、凡庸とか、一般人と変わらないとか言ってたくせに! 本当に対魔用の武器を取り出しましたよ?
と、とにかく逃げます!
ひぃー! やっぱり追ってくる! 狩り専門の『消滅屋』に一般人が敵うわけないじゃないですか! ってか、住宅街で武器振り回したり飛び道具使うのって規約違反じゃないんですか!? 能力者組合に訴えてやるー!
あああ……捕まっちゃいました。
もちろん、こうなることは初めっから想像つきましたよ。僕に戦う能力はないんですから。だけど……くそ! だんだん、腹が立ってきました。
丸腰の人間を追い掛け回し、ふん捕まえて優越感に浸ったあげく、$(ユーザー)まで笑いものにするなんて――!
……ふふふ。ちょっと、一泡吹かせたくなりました。
持ってきた道具全部使って、彼らから逃げます。
裏道使って帰りますから、鍵を開けといてくださいね。