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■ストーリータイトル■
LOTUS ~Love Navigation~



■ストーリー概要■
倉沢はすみ&Diteによる、BL学園ラブコメ小説「LOTUS」のコミュキャラ版です。
$ニックネームさんは、とある恋愛系コミュニティ・サイトの会員で、主人公の瑠音も同コミュニティの会員。自分の悩みを聞いてくれる、優しいお姉さんを大募集しています。メル友として、恋愛アドバイザーとして、瑠音の話を聞いてやってもらえませんか?

中学生になったとはいえ、瑠音はまだ12歳のお子さま。
しかも恋する相手は、高校生の「従兄」だったりするのです……。

幸い、両想いらしいのですが、2人の恋は幼くてもどかしくて。
前途多難な彼らの恋を、遠くから温かく見守ってやって下さい。


「LOTUS」シリーズ紹介サイト
  http://id45.fm-p.jp/1/kura0907/

「幻創文庫 倉沢はすみの書斎」
  http://pc.kourai.jp/login/user/?you_id=73751



■プロローグ■
 どうしよう、ドキドキする。
 今日から、ホントにこーちゃんとおんなじ学校に行けるんだよね。

 朝も一緒、夕方も一緒、制服も一緒!
 大変だったけど、中学受験、頑張って良かった。

 カミサマ、お願い聞いてくれてありがとう。
 でも僕、欲張りだから、もう1個お願いしてもいいですか?
 世界でイチバン大好きなこーちゃんと、早く「コイビト同士」になれますように!


 桜咲く4月。
 けれどこの学園に入学した新入生たちを出迎えるのは、桜ではなく、ようやく咲き初めた白と桃色の花水木だった。大正時代、東京市長がアメリカに桜を寄贈した折に、そのお返しとして贈られたことから「返礼」の花言葉を持つ、春の花である。なかでも、学園の前庭で枝を伸ばす花水木の古木は、大正時代からずっと生徒たちを見守ってきた、この学園のシンボル・ツリーだった。
「こーちゃん!」
 真新しい制服に身を包み、ちょっぴり緊張した入学式を終えた瑠音は、ベンチで待つ従兄に大きく手を振った。
「瑠音」
 同じ学園の中等部から高等部へと進級し、タイも高等部生を示す細い黒ネクタイに変わった光輝が、呼びかけに応えて柔らかく微笑む。その姿に、瑠音はちょっとだけ頬を赤らめた。日の光を受けてまぶしく輝く白い花の下、静かにたたずむ従兄がカッコよすぎて、なんだか嬉しいような悔しいような。高等部の始業式を終え、それだけで昨日よりちょっぴり大人びて見える従兄のもとに、瑠音は子犬のように駆け寄った。
「今日から3年間、ずっと一緒だね」
「ああ」
「朝と帰りも、一緒だよね?」
 尋ねればちゃんとうなずいてくれる従兄に、瑠音がとびきりの笑顔を向ける。
 やがて、いつもと変わらぬ口調で「行こう」と促され、瑠音は光輝と肩を並べて、学園の前庭に面したプロムナードを歩きはじめた。
「こーちゃん、これ、なんていう木?」
「ハナミズキだ。別名アメリカヤマボウシとも言うな」
「ふぅん、キレイだね。色も、名前も」
「そうだな。秋の紅葉も悪くない」
 同じ制服を着て同じ道を歩く、この幸せ――それを噛み締めているのは、瑠音だけではなかった。光輝も瑠音と同様、いやそれ以上に、瑠音の入学を喜んでいた。なんせ瑠音が晴れてこの学び舎の門をくぐるまで、光輝は5年間もの長きに渡り、さまざまな苦労を積み重ねてきたのである。そのすべての発端は、忘れもしない5年前の「ぼく、大きくなったら、こーちゃんとおなじ学校にいきたい!」という瑠音のヒトコトにあった。
 大切な姉と愛する従弟の望みは、それがなんであれ、絶対服従の勢いで聞き入れる光輝である。瑠音のこんな願いも唯々諾々と受け入れ、当時小学5年生だった光輝は、なんとその日のうちに、両親に「瑠音と一緒に中学受験に挑戦したい」と申し出たのだった。
 それは小さい頃から真面目で大人しく、滅多に何かをねだったりしない光輝の、いつになく真剣な頼みごとだった。両親はもちろん姉の日向子も耳を傾け、やがて両家の親たちは、光輝と瑠音に、とある私立の中高一貫校を勧めた。偏差値少々高めの難関校だったが、そこが2人の第一志望校に選ばれたのは、別に将来に役立つ進学校だったからではない。瑠音の母親・佐紀子が、この学園の制服に「ひと目ボレ」してしまったからである。

「ちょっとちょっとっ、この学校の制服、すっごくカッコいいじゃないの! 瑠音とコウくんにぴったりだわ!!」
「え、と……叔母さんに見てもらいたかったのは、制服とかじゃなくて、こっちの入試情報とか…………」
「瑠音、コウくん、いいからここにしなさい、ここに! ここならママも大賛成よっ」
 愛息子とカッコかわいい甥っ子を前に、佐紀子は学校案内パンフレットの制服紹介ページを開くと、コーフン気味にバシバシと叩いた。光輝の遠慮がちな声など、もとから耳に入っていないのだろう。佐紀子はもう一度、パンフレットに載っている制服の写真を見つめ、次いで愛息子たちに目をやり、瞬時に脳内で「着せ替え」をしてみた。
 似合う。
 似合いすぎて、もう眩暈がしそうだった。
「瑠音、いい子だからここにしなさい。ね、ママ絶対ここがいいから」
 佐紀子がそう息巻くのも、無理はなかった。
 この学園の制服は、人気ティーンズ雑誌の『みんなが選ぶ☆全国学校制服グランプリ』で、毎年ベストテン入りを果たしているほどの秀逸なデザインなのである。ジャケットが燕尾だなんて、中高生の制服として、そうそうあるものではない。
「瑠音、コウくん、ここでいいでしょ? 文句ないでしょ?」
「俺は……瑠音がいいなら」
 光輝は、隣に座る瑠音に、ちらりと目をやった。
 だが、瑠音はことの重大さなど微塵も理解してはいないのだろう、意識の99%を夕方のアニメ番組に持っていかれたまま、こくんとうなずくだけだった。
「じゃあ、決まりね。2人とも、頑張って合格するのよ!」

 とまあこんな感じで、本人たちよりむしろ佐紀子の勢いに押されるようにして、光輝と瑠音の第一志望校が定められた。実は光輝にとってはちょっとした因縁のある学校で、不安や困惑も多々あったのだが、それを表に出すようなことはしなかった。瑠音のためにひたすら勉強を重ねて、中学受験をみごと独力でクリアしたのである。その3年後に当たる今春、光輝の並々ならぬ助力と献身を受けて、瑠音も無事に合格を果たしたのだった。
「ねえ、こーちゃん」
 これから毎日の通学路となる道を行きながら、瑠音は光輝の整った横顔を見上げた。
「中学生っていったらさ、もう結構オトナだよね?」
「そうだな……小学生よりは、ずっと」
「だよね♪」

 瑠音の質問の意図をイマイチ把握しきれない光輝の隣で、瑠音が機嫌よく笑う。
 実は瑠音は、
(これでこーちゃんと一緒に過ごす時間がグンと増えたわけだし……あとはどうやってこーちゃんとの距離を詰めて、チュウまで持っていくか、だよね!)
 などという、光輝が聞いたらたまげるようなことを考えていたのだった。
 ただし、光輝は仰天するかもしれないが、瑠音にとってはひどく切実な願いなのである。先月、フツーの少女マンガと間違えて買ってしまった「ショタなBLコミック」によって、瑠音は「好きになったら男同士でもチュウとかエッチとかしちゃうんだ!」というコトを学んでしまったのだ。よって、互いに両思いの自覚がある光輝と、「早くそんなふうになっちゃいたい!」と望むようになってしまったのである。
(でもなあ……こーちゃんって、バカみたいに真面目なんだよねぇ)
 当面の目標は、夏休みに光輝とキスをすること。
 だが、どうやったらそこにたどり着けるのかちっともわからないし、瑠音は甘えん坊の一人っ子。おまけに恋の相手が従兄では、そのへんの友達に、簡単に恋愛相談をするわけにもいかなかった。
(あ、そういえば!)
 ふいに瑠音は、買ってもらったばかりの最新モデルの携帯電話を思い出した。
(ケータイに、ティーンズ専用のいい恋愛相談サイトがあるんだっけ。名前、なんだったかな……『ラブナビ☆ティーンズ・サイド』だったかな? んー、今度ちょっと覗いてみよっかなぁ。いい相談相手が見つかっちゃうかも)
 正確には12月の誕生日が来るまで「ティーン」ではないのだが、今日から中学生なのだから、まあ、問題はないだろう。瑠音は、そのサイトで相談相手を募ってみようと心に決めた。
「瑠音?」
 おしゃべりな瑠音が急に黙り込んだのに気づいて、光輝が声をかけてくる。
 瑠音は「何でもないよっ」と元気に答えると、「大抵の人は回避不可能&即死亡」と自覚している、必殺の天使の笑顔を光輝に向けて、花々が見送る道を駆け出した。


 そうして、その日の夜。
 ティーンズの恋愛問題に特化したケータイ・コミュニティ「ラブナビ☆ティーンズ・サイド」に、ひとつの新着メッセージが載った。それは、こんな文面だったという。

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■僕のレンアイ応援して下さいっ(≧人≦)

 今日、中学生になった瑠音です。
 僕にはずっと前から好きな人がいて、その人は僕のイトコです。
 僕もイトコも男なんだけど、たぶん絶対、両想いだと思います!
 
 夏休みまでにコイビト同士になりたいんだけど、僕のイトコは
 すっっごく真面目だから、どうしようかなって感じです。
 
 話を聞いてくれるお姉さんとかいたら、嬉しいです。
 メール待ってます(^-^) *RUNE*
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 メッセージが掲載されたのを確認して、瑠音は携帯電話をパクンと閉じた。
 誰か優しい人が、このメッセージに目をとめてくれるようにと祈りながら。